THE BEST 真璃子




THE BEST 真璃子
発売日 1988年9月21日
型番 33KD-143


01.私星伝説
02.悲しみのフェスタ
03.遅咲きのラベンダー
04.疑問符
05.虹の彼方
06.恋、みーつけた
07.あなたのすべてにRUN TO YOU
08.夕暮れの恋
09.不良少女にもなれなくて
10.IC TAC
11.ありがとう あ・な・た
12.夢飛行

「あのう、すんません、こんな夜分遅くから。ごめんやっしゃ、おくれやっしゃ」

 誰だ、夢枕に立つ奴は。非常識な。真夜中ではないか。

「ちょっとだけお時間よろしい?」

「お時間よろしいってどないやねん。そう言うとる時点でワシの安眠妨害しとるがな」

「私のこと覚えとってでっしゃろか?」

 巨大な、昆虫の種類に疎いので、これが何虫なのか私には分からないのだが、色のベースはグリーン、で、黄色と黒のストライプが入ってたと思う。そしてサイドにブラシ状の毛がワッサーと生えている、サボテン風の間隔で。

 そしてウネウネと落ち着きなく身体を動かしている。

「あっ、オマエはこないだ、営業車で回ってた時に、暑かったから公園のベンチに座ってアイスクリーム食べて休憩してた時、アスファルトで苦しんでた虫やんけ」

「覚えとってでしたか」

「覚えてるも何も、こないだリアルに助けた直後にツイッターで呟いてやったがな。虫をアスファルトから救って木の葉に移動してやった。美少女に生まれ変わってキスしてくれたらいいなー、ってツイートしたがな」

「そうですか、ですが現状、この姿で貴方に会いにきてます。これがどういうことか分かってはりますか? 私死んでここに来てるわけですわ」

「なに涙目で少しキレ気味になってるねん」

「貴方が『命を救ってやった』的なツイートをしているのを知り、辛抱堪らんようになってここへ来たんですわ」

「礼に来た割にはなんかピリピリした波動を感じるな。なんで命の恩人のワシが詰問されてる感じになってるねん」

「御主人、私を木の葉におろす時、ちゃんと確認しはりました?」

「ちょっと待てや、会社の上司みたいな怒り方やめれ。ちゃんと確認したのかね、って聞かれたらオロオロした目で『何の件でしたかね?』って目がバタフライしながら泳ぎまくる状況を、なんで我が家で味あわなあかんねん。倒置法テイストの叱り方やめろや」

「あの木の葉のすぐ横、クモの巣はってましたやん」

「あっ、やっぱりー? あれやっぱりクモの巣? そうじゃないかなーとは一瞬思ったけどな、ほこりかなーとも思ったわけよ。マジで。悪気はまったくなかったし。クモの巣がどないかしたん?」

「どないしたもこないしたも、左足、モロにクモの巣の上でしたわ。クモ直後にガバーッってすり寄ってきましたわ。これならアスファルトで暑いながらも土のとこまで自分のペースで移動してた方が、何倍もマシでしたわ。御主人が営業車で立ち去られた後、私糸でグルグル巻きにされて頭からいかれましたわ」

「謝れってか? ワシに」

「そんな言い方ないと思いますわ」

 横から等身大の蚊が出てきた。

「うわぁ、今度はなんや」

「昨日血を吸わせてもろうた蚊です。痛くなったらすぐセデス痒くなったらそりゃ蚊です。の蚊です」

「そんなコマーシャル知らん」

「御主人の血、吸わせてもろうたんですけど、血がドロドロで生んだ子供、のきなみメタボですわ。大丈夫かいな、飛べるんかいなこの子たち、みたいなレベルですわ」

「盗人猛々しいとはこの事や。ワシ知らんがな」

「それに御主人、無呼吸症候群でっしゃろ? 静かで今がチャンス、思って近寄ったら15秒ほどしてグゴーって呼吸が再開して、心臓止まりよったですわ。少し痩せなはれ」

「分かってるがな。最近ウォーキング始めたがな。一向に痩せんわ。効果がないから、会社から帰って歩く一時間を執筆に回したいくらいや」

「ミミズだーって、オケラだーって」

「何いきなりハーモニーしてるねん」

「御主人、もうちょっと気配りを徹底してくださいな。助けるなら助ける。中途半端で詰めが甘過ぎですわ。それでチャッカリと神の予約には『毛虫を救ったから生まれ変わりでキスを』みたいな予約が入ってるし。消さしてもらいましたわ」

「カラオケの選曲予約みたいに簡単に消せるんかい?!」

「言い分をちゃんと聞いてください。これでは死んでも死にきれません」

 耳の奥で虫たちの声がエコーする。ガバ、と布団から跳ね起きる。チュンチュンと雀が鳴き、朝日がカーテンの隙間から射し込んでいる。悪夢にうなされていたようである。

「ホームセンターアグロに行こう」

 開店を待ち、バルサンを手に取るとレジに走った。部屋に大量のバルサンをセットし、窓を閉め切って点火した。

 数時間後、部屋の中には蚊や毛虫やゴキブリの死骸が床に散らばっていた。ちりとりですくうと半分くらい埋まった。

 昆虫どもは全滅したようだ。以降、夢枕に昆虫が立つことは二度と無かった。

 次の日はグッスリと眠れた。





いつも来てくれてありがとう。ぜひ上の白いボタンをぜひ押してくれよ。虫とは友達になれそうにないです。
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