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松田聖子 ウインターテイルズ



松田聖子 ウインターテイルズ
発売日 1996年11月1日
型番 SRCL3704

01.パール・ホワイト・イヴ
02.トゥギャザー・フォー・クリスマス
03.ハートのイアリング
04.凍った息
05.デッセンバー・モーニング
06.愛されたいの
07.ブルー・クリスマス
08.雪のファンタジー
09.恋人がサンタクロース
10.二人だけのクリスマス
11.きっと、また逢える…
12.外は白い雪
13.抱いて…

「わしらのまんが道」第36話 賭けるということ

(バックにはホールド ユア ラスト チャンス)

漫画家を目指して姫路から大都会東京へ飛び出した金平と呉。四畳半ひと間のアパート「トキヴァ荘」を根城に、せっせと原稿を描く日々。金平の方はチラホラと読み切りの仕事が決まっていったが、呉の方はサッパリ振るわず金平に依存して生活する日々が続いていた (※ナレーション 森本アストラ)

徹夜明けの金平、1ページ一万五千円の読み切り4ページが仕上がり、そのまま編集部へ持ち込んだら担当が気を利かせて、とっぱらいの現ナマ、税引き5万4千円を手にしてホクホク顔。呉に旨いものを食わせてやろう、とすき焼きの材料を買い込んでトキヴァ荘を目指していた。

アパートの前でイライラと下から部屋の様子を伺っている中年男性。見た目は中尾彬にそっくりである。チキンな金平は風貌だけでビビっていた。

「あー、君。このアパートに住む呉エイジという漫画家を知っているかね?」

「ええっ? は、はい。知っていますけど、どういったご用件で?」

中年は怒りを顔を出しながら話し始めた。

要約すればこういうことであった。半年前、本屋でばったり呉エイジと出会ったこの中年男性は、会社を経営する敏腕社長で、投資にも辣腕をふるっていた。

話せば呉エイジに何かしら光るものを感じ、境遇を聞けば資金難で最速のパソコンと漫画制作ソフトとペンタブレットさえあれば、傑作を物にして一躍世の中に躍り出る自信がある。と熱く語って見せた。

その熱意に社長は打たれた。

しかし社長は見抜けなかった。その気にさせるのが呉エイジの得意技である。ということを。地味で何もやりそうにない金平の方が、コツコツと地道と作品を仕上げていき、結局成果を残せていることまでは見抜けなかった。

「そ、それで社長さんは呉に投資されたのですか?」

「そうだ。半年前に30万円託した。今日本屋に寄ったが呉エイジのくの字も出ていない。ワシは気の短い男なのだ。今日は様子を見に来た」

「そういうことでしたら上にどうぞ。実は私の同居人です」

なんだ、という風にジロリと睨みを効かせ階段を上っていく。はて? 呉の持ち物で最近パソコンやタブレットが増えていただろうか? 毎日一緒に四畳半の部屋で寝起きしているが、そんなものどこにもなかった。

金平は中年男の背中越しに部屋の扉を見入った。

足でバイオハザードのように扉を蹴り開ける中尾彬。

そこにはジーパンを膝まで下ろし、オナニーの真っ最中であった呉エイジの姿があった。こちらと目が合うと、テイッシュを抜いては股間に抜いては股間に、と。イチモツを隠すのに必死であった。

「貴様、昼間から漫画も描かずに何をしている!」

折りたたんだ足に生える剛毛な足毛が痛々しい。

「この部屋で貴様に30万投資したはずだ。ワシは金は手に入れた。あとは社会的名声が欲しかった」

中年男は目を細めて空想モードに入った。

「ということはですね、大ヒット漫画家、呉エイジが貧乏な時に手を差し伸べたのが社長ということだったんですか?」

インタビュアーがマイクを向ける。

「そうです。私は若い力が貧しさで芽が出ないまま枯れるのが、特にこの大東京では日常茶飯事なのですが、どうしても惜しかった。彼には光るものを感じていたのです」

「社長のおかげでベストセラーが出せました。社長がいなければ…」

泣きながらカメラの前で抱擁を交わす二人。

「なんという現代の美談!」

薄めた目が徐々に見開かれる。視界にはオナニー途中の呉エイジ。棚にはこの前に来た時にはなかった、エロDVDが溢れんばかりに増えている。

「き、貴様、この前この棚はカラッポだったではないか。もしやワシの投資金で買い漁ったのか? 飛び出す潮吹き若奥様。3Dメガネ同梱版…。場面と連動、電動オナホール同梱、寝ているだけ! マグロ大使…」

呉エイジは恥ずかしそうに目を伏せた。

「バカモン!」

中年男の拳が容赦なく顔面を捉えた。振り切った顔から飛び散る鼻血。

「こんなもんのために、こんなもんのために30万を、この人間のクズがっ、カスがあぁっ!」

中年男は馬乗りになり、執拗に殴り続けた。両鼻から血が、口も歯が折れたのか、血が溢れ出ていた。

「そうやって人の期待を平気で裏切れる畜生め」

男は足で呉エイジの顔をにじりながら踏みつける。

「これぐらいでは済まさんぞ」

男は逃げようとする呉エイジのあらわになった尻にジッポーライターで火をつけた。

「このペテン師め、詐欺師め、底辺人間め」

呉エイジはグッタリとして動かなくなってしまった。我に変える中年男性。

「き、君はこんな虫ケラと親友なのか? 見たところ君に依存して生きている感じだな。全部吸い尽くされる前に逃げた方が、いや捨てた方がいい、と忠告しておこう。では失敬」

男は振り返りもせず立ち去っていった。

震えながら血まみれの顔で起き上がろうとする呉。

「だ、大丈夫か?」

「さ、最低だよな…」

「そうだよ、30万も…」

「あの、オッサン」

「フアッ!???」

「いいか、金平。己の力で、自らの足で立ち上がろうともせず、赤の他人に期待して社会的名声を得ようとするなんざ愚の骨頂。人間のクズの部類だよ。ロクな人間じゃない。薄汚れた生き物さ」

「で、でもおまえ、このエロDVD…」

「これは創作力をマックスまで高める原動力で、資料と同一だ。抜くことによってスッキリし創作に没頭する。これを視聴せねば、どんな感じで若奥様の3D潮吹きが飛びかかってくるのだろう。俺はよけきれるだろうか? と気になって筆が進まなかったことだろうよ」

「…」

「あのチンカスから勝手に託された30万の残りがあと二万…。金平、今からこれでステーキ食いにいこうぜ!」

鼻血でジーパンまで赤く染めた呉エイジがふらつきながら立ち上がる。

夕暮れにそまるトキヴァ荘を見ながら焼肉屋へと向かう二人。

「(呉…、抜いてスッキリして創作に没頭するて、お前いつも抜いたらクタクタになって早寝してるやん!)」

呉エイジが漫画ではなく文章の方で世の中に出るのは、まだ数年先のことであった(ナレーション 森本アストラ)



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マックピープルの巻末に毎月こっそり「我が妻との闘争」を連載しておりました。電子書籍1巻から5巻、絶賛発売中!

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