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松田聖子 SEIKO



松田聖子 SEIKO
発売日 1990年6月7日
型番 CSCL1090

01. オール・ザ・ウェイ・トゥ・ヘヴン
02. ヒーズ・ソー・グッド・トゥ・ミー
03. リーヴ・イット・アップ・トゥ・フェイト
04. ザ・ライト・コンビネイション
05. グッドバイ・マイ・ベイビー
06. フーズ・ザット・ボーイ
07. ウィズ・ユア・ラヴ
08. エヴリバディ・フィールズ・オールライト
09. ハーフウェイ・トゥ・ヘヴン
10. トライ・ゲッティン・オーヴァー・ユー

昨日のことだ。大阪城ホールにて開催された松田聖子2014「ドリーム&ファンタジーツアー」へ、幼なじみの漫画家、金平と二人して連れ立って行ってきたのである。

デビュー35周年記念ライブと銘打たれているからだろうか、会場には同年代のドレスアップした女性の波、波、波。

私にとっては永遠のアイドルなのだが、同世代の四十、五十の女性にとっては「美のカリスマ」という側面も持っているのだろう。奇麗に着飾って、若さを保った、まぁ中にはかなり無理しているひともいたが(笑)それでもチラホラパッと見、二十代後半にも見える四十代の女性の姿もあり、影響力の強さがこちらにまで伝わってきた。

松田聖子に出会ったのはその金平の家でのことだった。金平の兄ちゃんというのがこれまたビーバップハイスクールがそのままコマから出てきたような生粋のヤンキーであり、その兄ちゃんが親衛隊として当時の聖子ちゃんのライブへ通っていた流れで、自然と遊びに行けば隣の部屋からBGMとしていつも流れていたのが松田聖子のアルバムであった。

「風立ちぬ、はエエ音しとる」がお兄ちゃんの感想であった。

アイドルとしては当時は河合奈保子の巨乳の方が好きで、憧れる対象ではなかったのだが、なんせ曲が良かったので音楽性に惹かれてのめり込んでいった口だった。

そして聴けば聴くほど絡み付くクモの糸のように、ハマって逃れられなくなっていく、超音波のように男心をくすぐる甘い声。多分、同性から出たやっかみであろう。それは「ブリッコ」と名付けられた。

そういうバッシングも関係なく、中学、高校と金平と家で漫画を描く時には、いつもBGMとして流れていた。

長年慣れ親しんできたその「生、松田聖子」である。

人生のTO DOとして相棒の金平と掲げている目標がある。佐野元春のライブに行く(クリアー)松田聖子のライブに行く(昨日クリアー)浜田省吾のライブに行く(未逹)四国一周ブックオフ巡り(未逹、2015年に行けるよう貯金中)九州一周ブックオフ巡り(完全に未定)

その二つ目のクリアーである。

思えばもう四十五になってしまった。最近よく思うのは、そんなに人生は長いもんじゃない、ということだ。気持ちはいつまでも十六くらいのままなのだが、冷静になって考えれば、あと二十年、保たずにポックリと逝ってしまうかもしれない。

時間は永遠にある、という思いは自分の中からは無くなってしまった。残った時間でどれだけ好きなことができるか、どれだけの作品を残せるか(どうも我が妻との闘争、六巻は出せそうにない雲行きだ)

ということを最近よく考えるようになった。

ライブ中は、そんな雑念が入り込む余地もなく、大いに盛り上がったライブとなった。大スターの貫禄さえ見えた。よく声もケアされており、往年の名曲が違和感なく再現されていた。

また行きたい、と思わせる内容であった。

東京へ締め切りのためにトンボ返りする金平と、ビアホールで祝杯。

「おまえ、毎月よく頑張ってるな、落とさずに、アシスタントも使わずに」

「はは、アシスタントなんか俺の身分で使ったら、利益残るかいや。給料に、食事に、交通費に…」

「ええっ?! アシスタントに交通費? そこまで色々としてやるのか? 勉強させてもらってます、みたいな向こうの謙虚な気持ちは無いんか?」

「んなアホな。弟子制度やあるまいし。最近はそこまでやらんと集まらんよ」

「それでも昔ほど本が売れなくなった」

「確かに売れなくなった。80年代を通過してきたワシらには特にそう感じるよな。そうそう、我が妻来月号で最終回か、よう頑張ったな。十五年か? サラリーマンしながら大したもんやな、来月お疲れ会開こうや」

「サンキューサンキュー。持つべきものは古き友、やな(笑)」

「どないすんねん?」

「どないもこないも、誌面のリニューアルやからお役御免や。普通のオッサンに戻るだけや」

「会社人間に集中するんか?」

「いや、やっぱりサラリーマンしながらの毎月の締め切りは、コンディションの悪い時はホンマ苦しかったんや。だから少し休んで、今書きかけの長編小説を完成させて変名で応募すること、かな」

「呉エイジは封印するんか?」

「いや、まっさらになって力試ししてみたいんや。通れば何がしかの力があったんやろうし、落選したら本出せてたのは「まぐれ」やった、というのが骨身に沁みて本格的に文章と向き合えるやろ? で変名やから恥ずかしくないやん(笑)」

「そうか、それにしても旨いビールやな」

「旨い、酒飲まん俺でも分かる。ドイツの直輸入の樽ビールか。たまにはええな、こんなのも。一杯八百円か」

「サラリーマンしながら大変やろうけど、とにかく書きかけのやつ、なんとしても完成させろ」

「口回りのヒゲに三割白髪が混じっとるオッサンに言われたくないわ」

「もういっそ全部白髪になってほしいんやけどな、宮崎駿みたいになって貫禄でるやろ? ていうか、人のこと言えるかいや。オマエ自分だけ十代の気分で話かけてきてるけど、オマエも年相応に老けたぞ(笑)」

「そうか、まぁ互いに元気でおろう」

「乾杯」

チン、とグラスの音が鳴った。


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NEW BEST 1500 桑田靖子




NEW BEST 1500 桑田靖子
発売日 2005年8月24日
型番 TOCT-11032


01. 脱・プラトニック
02. 愛・モラル
03. もしかしてドリーム
04. マイ・ジョイフル・ハート
05. あいにく片想い
06. ガラスのラブレター
07. ひそやかな反乱
08. うれしはずかし うっふっふ
09. Just
10. 僕たちのrun Away

 たまには真面目な事を書く。

 久しぶりに感動したからだ。私がホームページを立ち上げた1996年、その頃からのお付き合いである「静炉巌」さん。

 となりに貼ってあるリンク集「湘南から元気倶楽部」の作者。

 そこから派生した別のブログ「それは夏の時間」の、テーマ別記事にある「はじめに」を読んで、深く共感したのである。

 そうだ、そんな思いで、私もマックに向かって何かを発信し始めたはずだった。

 思えば私も「物作り」の業に取り憑かれた一人である。

 奇跡的に雑誌連載を始めることが出来たがプロという自覚は全く無く、仮に連載をしていなかったとしても、ホームページやブログなりでわけのわからない文章を発信し続けていたことだろう。

 そして静炉巌さん制作のホームビデオ「ウルトラマン シャクティス」そのネーミングの妙もさることながら(お子さんが突発的に決めたらしい)、全編を貫く熱い創作魂。

 私は声を引きつらせて笑ってしまった。久しぶりの事である。他人の創作物に対して、私は必要以上にクールである。取り込まれないように、冷静に分析できるよう、娯楽には常に距離を取っているからだ。

 そうだ、創作の原点はこういうことだった。単純明快。

 まず自分が大笑いして(熱くなって)取り組む、そして出来上がった物を俯瞰で眺める、隣の人にも笑ってもらいたいので、自分だけにしかわからないコードをデコレートする。

 それが商用にまで高まれば商品になる。

 だが、その「商品」というものに対して、現代は過酷な状況を迎えている。

 一流アーティストも「CDが売れない」と嘆いている。

 そりゃそうだろう。我が家の三人の子供も、お気に入りのアーティストCDを買う、という発想がない。三人の部屋にCDは一枚もない。

 iphoneのYouTubeアプリで簡単にお目当ての曲が聴けてしまうからだ。

 そのうちにCDもなくなり、漫画や小説も一部の好事家だけの楽しみとなり、上の世代の娯楽、映画産業が斜陽を迎えたように(全盛期に活躍した関係者は、まさか映画が衰退する娯楽になるとは思ってもみなかっただろう)何かと取って代わられるのかもしれない。

 兼業で創作を続ける(生活基盤を確保した上で)以外の、腕一本で食べていく人間にとっては、厳しく先行きの暗い時代に向かっているような気がしてならない。

 それこそ批判、売り上げ、逆境にもめげない「鋼のようなウィズダム、輝き続けるフリーダム」の「創作をしないと収まらぬ」純粋精神の持ち主だけが、今後サバイブしていけるのかもしれない。





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Bouquet 吉田真里子




Bouquet 吉田真里子
発売日 1991年12月12日
型番 SRCL 2266


01.とまどい
02.さよならのリフレイン
03.夢を追いかけて
04.夏の恋人達
05.嘆きの天使
06.陽ざしのソリチュード
07.Roman~ロマン~
08.すべては空の下
09.19歳
10.未来 (あした)

「ここかなぁ」

 メタボ気味の大学生が裏路地をウロウロと彷徨っている。かつては赤いチェック柄であったろうオレンジのシャツは汗ばんでいた。ワキ汗の半径は軽く10センチを超えていた。スパイシーな臭いが仄かに漂う。

 グーグルマップでは確かにここ、木造の昭和感溢れる小汚い長屋を指していた。

「Wメン秘密基地……、ここか、って表札かまぼこ板にマジックでかい! しかも超クセ字で汚いし」

 スマホを尻のポケットにしまうと、大学生は磨りガラスの入った戸を横に滑らせた。立て付けが悪く何度も引っかかる。

「ごめんください」

 薄暗い和室には真ん中にちゃぶ台こそあれ、壁は一面にこの場には不釣り合いな最新コンピューター機器が設置されていた。

「来たかね、分かる。私も特殊能力者だからね、特殊能力者は特殊能力者を引き寄せ合う。これは宿命なのだ」

 部屋の隅でスーツ姿で年配の、頭がツルツルな初老の紳士が、大学生の前へにこやかに立ち軽く会釈した。全て分かっている風である。

「ツイッター見て来たんです。特殊能力者求む、時給応談、家族のような雰囲気の職場です、頑張れば賞与もあります。ってほんとですか? 社長」

「おい、ちょっと待て、自分、今なんて言うた?」

 温厚そうな初老は目の色を変えて大学生の方を睨んだ。

「し、社長という呼び方の方ですか? それともいきなり賞与の話題はタブーじゃ若造ってことですか?」

「ワシの呼び方やがな、社長と違う。プロフェッサーと呼びなさい」

「わかりました、プロフェッサー」

「初手から厳しいですね、プロフェッサー」

 部屋の隅の陰から30歳くらいのガリガリな男が出てきた。

「よろしく、俺も君と同じく特殊能力者だ。この能力のおかげで社会からはつまはじきの村八者さ、でもプロフェッサーのおかげで今はこんなに明るく元気で毎日が活気に満ちている。なんか青汁の宣伝みたいな感じだな」

 何を言ってるのかよくわからない。

「大学生、事態がよく飲み込めていないようだな、君、特殊能力を彼に披露したまえ」

 プロフェッサーはガリガリの男に指示を出した。

「わかりました、じゃあ君、ちょっと近くに来てみ、で、俺の耳の後ろの匂いを嗅いでみ?」

 大学生は言われるがままガリガリ男の背後に立つ。

「あっ、シナモンの香りがする」

「そう、彼の特殊能力だ、今後『シナモン』と彼の事を呼びたまえ」

 シナモンはドヤ顔で振り返る。

「あらあら、にぎやかなことね」

 大学生が振り返ると、赤いパッツンパッツンの胸元が大きく開いたドレスを着た、フェロモンムンムンの熟女が微笑んでいた。二流のサスペンス劇場に出てきそうなタイプである。

「いいこと、私のこの指と指の間の付け根を見て」

 大学生は顔を近づけて熟女の手を見る。すると赤い斑点が浮き出てきて、だんだんと大きくなる。どうやら液体が分泌されているようだ。

「えいっ」

 熟女はその液体を、近づいて見ている大学生の顔めがけてふりかけた。

「い、痛っ、目が痛っ、それに刺激臭、これラー油っすか?」

「そう、彼女の特殊能力だ、今後は『ラー油』と呼びなさい」

 プロフェッサーは熟女の腰に手を回す。ちょっといやらしい雰囲気だ。職場不倫になっているのかもしれない。バレていない、と思っているのは当人らだけで、意外と周りはすぐにわかるものである。

「さぁ、次は君の番だ。この二人に君の特殊能力を披露したまえ、あっ、確認だけどいきなり死ぬ系の技じゃないよね?」

「大丈夫だと思います、では」

 大学生は両手を広げ、手のひらを特殊能力者二人の頭めがげてかざした。

「はうっ」

「あはん」

 頭を抑え、畳に膝をつく二人。

「き、君、二人に何をした!」

「ぷ、プロフェッサー、へ、偏頭痛がします」

 シナモンが苦しそうに報告する。

「そうか、君の特殊能力は偏頭痛をお見舞いすることか、すばらしい、今日から君は『偏頭痛』だ」

「よろしく偏頭痛」

 シナモンが握手を求めてきた。プロフェッサーとラー油は後ろでスタンディングオベーション。

「今日だけで三人も集まった。いいかい、君たちは特殊能力で社会から差別を受けてきた。普通の人とは違う。が、心の中はどうだ? 正義か? 悪か?」

「正義です!」

 三人は揃って返事する。偏頭痛は二人を見る。かなり先輩だと思っていたのに、今日集まった人たちなのか。

「正義だな。よし、君たちの運命は決まった」

 プロフェッサーが言い終わると屋根に取り付けられた赤いサイレンが音をたてて回りだした。

「悪の特殊能力者レーダーが反応した、出動だ! Wメン!」

 三人の呼称はWメンになっているらしい。

 プロフェッサーを先頭に三人が後へ続く。裏口に回るとスーパーカブと後ろに縄で連結されているアヒルの乗り物が三台。

「こ、これですか? ステルス戦闘機とかじゃなくて」

「ん? なら現場まで歩いて行くか? きょうび送迎付きなんてなかなかないでホンマ」

 プロフェッサーはキックでカブのエンジンを回す、なかなかエンジンはかからない。

「俺が先頭、ラー油は真ん中、偏頭痛は最後尾な」

 シナモンが場を仕切る。

「Wメン、ゴォーッ!」

 プロフェッサーが法廷速度をかなり下回るスピードでカブを走らせた。速攻で後ろはパレード。道路の真ん中を走っているので後続車も追い越しができない。鳴り響くクラクション。

「あっ、ちょっと寄るで」

 徐行しながらプロフェッサーは歩道に乗り上げる。

「リッター160円やから、一人40円出して」

「ええっ、ガソリン代割り勘なんですか?」

「安いがな、ここセルフで、こっちも街で一番安い所チョイスしてるがな、文句あるなら現場まで歩いて行くか?」

 プロフェッサーは『歩いて行くか?』ばかりを脅し文句に使ってくる。暑いので歩きは避けたい。痛い所を突いてくる。

「そろそろ到着するで」

 カブが止まる。追突気味にアヒルの乗り物がぶつかって三人のWメンは道路に放り出される。引き裂くような悲鳴、人々の逃げ惑う姿。

 噴水のある公園で、黒いマントのヤクザ系の顔をした男が両手から炎を出して街の人たちを襲っている。

「めっちゃ強そうですやん。勝てますのん? 作戦ありますのん? プロフェッサー?」

 偏頭痛は困惑を隠しきれない。

「私は司令塔だ、作戦は君たちが立てたまえ、最終、どうにもならんようになったら、私の必殺技一発で終わらせるさかい、とりあえずやってみて」

 プロフェッサーは植え込みの後ろに隠れる。

「いいか、ラー油、偏頭痛、あのような悪を許すわけにはいかない。特殊能力を手にしたら、人間は悪の道へと走るのだろうか。否、違う。そんなことをするために神はこの力を授けたわけじゃないはずだ」

「シナモンさん、お話の途中ですんません、後ろでOLさん火炎放射されて逃げてますけど」

「いかん、悠長に語ってる場合と違うな、じゃあ作戦を言う、まず俺がアイツに近づき耳の後ろを嗅いでみ? って注意を誘う。その間にラー油は指で分泌始めててくれ、そしてシナモンの匂いにビックリしたところでラー油の目つぶし。両目を押さえて苦しんでいる所を、偏頭痛がやってくれ。あの噴水の後ろ水路になってるやろ? 15メートルの段差あるわ、あそこまで追い込んで落ちれば死ぬわ」

 三人お揃いの、前にファスナーの付いた、出撃前に支給された黒い衣装を着て立ちはだかる。

『これ、皮かな? って渡されたときに一瞬思ったけど、ビニールやん』

 偏頭痛が素材に気付く。

「人々を襲うのはやめろ、情けなくないのか? 悪い事をすれば全部自分に帰ってくるもんやぞ? 因果応報だ」

 シナモンは自分に酔い気味で説得をする。

「うっさいハゲ」

 黒ヤクザは両手から千度の炎の柱を吹き出した。火に包まれて速攻炭になる二人。

「シナモンさーん、ラー油さーん」

 一瞬で勝負が付いてしまった。

「くっそう、二人のかたきだ。最高の偏頭痛で頭を割ってやる」

 泣きながら偏頭痛が両手を黒ヤクザにかざす。

「い、いてぇっ」

 効いているようだ。黒ヤクザは地面に膝をついた。偏頭痛は振り返る、プロフェッサー、足止めしている間に必殺技で決めてください。アイコンタクトを送るもプロフェッサーはビビって前に出てこない。

「オマエも死ねやーっ!」

 片手でこめかみを押さえながら、もう片方の手を偏頭痛にかざす、強烈な火柱が偏頭痛を包み込んだ。

「うわぁーっ」

 公園にパチパチと音を立てて燃える三体の遺体。

「お疲れさまです。いつ見てもほれぼれする火柱でございます」

「見え透いたお世辞はええがな、三人やから今日は一万五千な」

 黒ヤクザがプロフェッサーに封筒を渡す。

「中身確認させてもらいます」

「ちゃんと入れてるがな、ほんでな、これくらいのレベルの奴らならな、十人くらい溜めてから来て。こっちも回数こなすの夏場はシンドイし」

「わ、分かりました。すんません」

「正義の能力者はな、時間たてば進化して成長するからな、そうなったら厄介やから、早めに頼むで、早めのパブロンやで。そういえば頭痛いわ、自分パブロン持ってる?」

「あ、あります。一袋どうぞ」

 プロフェッサーはスーパーカブまで走って後ろの荷台から薬を取って戻ってくる。

「ありがとうな、じゃあまたツイッターで正義の能力者の募集、休まずに頼むで。ピッチあげよか、時給800円から1050円に表示変えてええで」

「分かりました。さっそくやっときます」

 そういうと黒ヤクザはテレポートして消え去った。プロフェッサーはまだ、もみ手をしながら顔をこわばらせている。

「正義の特殊能力っていっても、自分自身の頭髪が全て抜け落ちる能力じゃ絶対に勝てんしなぁ、長いもんには巻かれるしかしゃあないでホンマ」

『それ、ただのハゲやん!』

 と突っ込める者は、周りに燃える三体の遺体だけで、他には誰もいない。





いつも来てくれてありがとう。ぜひ上の白いボタンをぜひ押してくれよ。世の中には裏の世界がイッパイ。

Fight! BaBe




Fight! BaBe
発売日 1988年6月21日
型番 D32A030


01.Fight!
02.TONIGHT!
03.Full Moon Night
04.Love in the first degree
05.It’s a Magic!
06.Midnight Juliet
07.Two Fish
08.Fishes
09.Best Friend
10.Silent Dancer
11.Get a Chance!(English Version)

 男は真っ白い上等なスーツに身を包んで、腰から伸びる金の鎖をたぐり寄せて懐中時計を覗き込んだ。

 強い日差しに目を細める。時刻は正午、額に汗が滲む。

 男は成功者であった。日本から世界を相手に商売をし、巨万の富を手に入れた。

 会社は息子に任せ、今は悠々自適な世界旅行者であった。

「なんと貧しい…」

 男はつぶやいた。土ぼこりの舞うメインストリートとおぼしき通りには、屋台で果物を売る者、人力車の横で客を待つ者、走って遊ぶ汚い服を着た子供たちの姿などが目に入った。

「この子供たちはちゃんと学校に行き、教育を受けているのだろうか…」

 ピカピカのエナメル靴が汚れぬよう気をつけながら、男はタクシーを停めさせて通りへ降りた。

 すると、顔を泥だらけにした男の子が物珍しそうに近寄ってきた。男は子供を観察する。かなりやせ細っている。日頃栄養のあるものを食べていないのだろう。足下を見ればサンダルは両方種類が違う。服も何日同じ者を着続けているのか見当もつかなかった。

 男は哀れに思い、ポケットから食べかけのチョコレートを取り出して男の子に差し出した。

 男の子は「こんな美味しいもの今までに食べた事がない」という顔をして、キラキラした瞳を男に向けた。

 するとどこから集まってきたのか、その男の子の友達なのだろう。同じような年齢の子供たちが男の周りを取り囲んだ。

 男は子供たちにまとわりつかれて、くすぐったい気持ちになった。

 まだお菓子はあったはずだ。男はポケットをさぐる、袋入りのキャンデーやビスケットがあったので、取り出すと無数の手が男の顔の前に伸びた。

「慌てずにみんなで仲良くわけなさい」

 押すな騒ぐなの大騒ぎである。男は子供たちのおしくらまんじゅうで幸せな気分になった。

 日本では過酷な競争で商売に打ち勝ってきた。男は愛情に飢えていた。こんな人肌に触れる温もりなど久しぶりの事だ。

 同業者は言う。日本は舐められている、強固な姿勢を崩すな! と、そして必要以上に外国を罵った。

 しかし男は基本、世界の人とは仲良くしたかった。いろんな歴史的背景を説く人もいて、男にも外国の悪口を言わせようとそそのかすが、男は聞いていて馬鹿らしくなるのが常だった。

 その説得する男自身に実害などなく、ニュースなどで聞きかじった情報だけで外国を罵っているのだ。自分の考えなどハナから持ち合わせていないのだ。

 仮に情報操作されたニュースを聞いたとしても、その男なら熱くなって真に受けて、ライフルを持って攻め込んでいきそうな勢いである。

 それじゃだめだろう。男はため息をつきながらジョンレノンのイマジンを鼻歌で歌い気分を変えるのであった。

 世界の人とは仲良くしなければならない。男はおしくらまんじゅうの中で改めて思うのであった。

 すると背広の内ポケットに違和感を感じた。無数に伸びる手の中の一つが男の財布を抜き取ったようであった。

 男は反対側の内ポケットから、温厚な風貌とは不釣り合いの、銀色に光る長いリボルバーマグナムを抜き、財布を抜いた男の子の額に押し当ててズドン、と一発お見舞いした。

 男の周辺から子供たちが離れた。

 地面には眉間に奇麗な赤く丸い穴の開いた男の子が倒れていた。痙攣した手には財布から抜き取られた紙幣が握られていた。

「いいかいみんな、貧しくても盗みはいけない。いいね」

 男はそう言うとタクシーに戻り、その場から立ち去ったとさ、めでたしめでたし。

 と、その後日談もあったわけで、取り残された子供たちは撃たれた子の死を悲しみ、大いに反省したそうである。この子の死を決して無駄にしてはいけない。残された子供たちは全員で固く誓ったそうな。

 そして1キロ先の屋台で果物を買って食べている男に追いつくと、今度は後ろからこん棒で後頭部をしっかりとフルスイングで殴打し、昏倒させてから財布を抜き取ったそうな。

 男の目、鼻、口、耳から血が流れ、全部の穴から吹き出しちゃうーっ、と、文字で書けばイヤラシくも響くが、見た目は激ヤバであり、こりゃ死ぬな、と露店のオッサンも速攻思ったそうである。

おしまい

〜先生より 作品全体に完全なる人間不信の影が見えます、が仲良くはしていきたい、と常々思ってらっしゃるみたいですね。この悲観的なオチより子供たちが改心してハッピーエンドを迎える方が、文章離れ著しい昨今、大多数のウケはよいかと思います。ご一考を。それからエイジさんだけ今月の文章講座のお月謝、まだになっております。お早いお振込をお願いいたします〜




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THE BEST 真璃子




THE BEST 真璃子
発売日 1988年9月21日
型番 33KD-143


01.私星伝説
02.悲しみのフェスタ
03.遅咲きのラベンダー
04.疑問符
05.虹の彼方
06.恋、みーつけた
07.あなたのすべてにRUN TO YOU
08.夕暮れの恋
09.不良少女にもなれなくて
10.IC TAC
11.ありがとう あ・な・た
12.夢飛行

「あのう、すんません、こんな夜分遅くから。ごめんやっしゃ、おくれやっしゃ」

 誰だ、夢枕に立つ奴は。非常識な。真夜中ではないか。

「ちょっとだけお時間よろしい?」

「お時間よろしいってどないやねん。そう言うとる時点でワシの安眠妨害しとるがな」

「私のこと覚えとってでっしゃろか?」

 巨大な、昆虫の種類に疎いので、これが何虫なのか私には分からないのだが、色のベースはグリーン、で、黄色と黒のストライプが入ってたと思う。そしてサイドにブラシ状の毛がワッサーと生えている、サボテン風の間隔で。

 そしてウネウネと落ち着きなく身体を動かしている。

「あっ、オマエはこないだ、営業車で回ってた時に、暑かったから公園のベンチに座ってアイスクリーム食べて休憩してた時、アスファルトで苦しんでた虫やんけ」

「覚えとってでしたか」

「覚えてるも何も、こないだリアルに助けた直後にツイッターで呟いてやったがな。虫をアスファルトから救って木の葉に移動してやった。美少女に生まれ変わってキスしてくれたらいいなー、ってツイートしたがな」

「そうですか、ですが現状、この姿で貴方に会いにきてます。これがどういうことか分かってはりますか? 私死んでここに来てるわけですわ」

「なに涙目で少しキレ気味になってるねん」

「貴方が『命を救ってやった』的なツイートをしているのを知り、辛抱堪らんようになってここへ来たんですわ」

「礼に来た割にはなんかピリピリした波動を感じるな。なんで命の恩人のワシが詰問されてる感じになってるねん」

「御主人、私を木の葉におろす時、ちゃんと確認しはりました?」

「ちょっと待てや、会社の上司みたいな怒り方やめれ。ちゃんと確認したのかね、って聞かれたらオロオロした目で『何の件でしたかね?』って目がバタフライしながら泳ぎまくる状況を、なんで我が家で味あわなあかんねん。倒置法テイストの叱り方やめろや」

「あの木の葉のすぐ横、クモの巣はってましたやん」

「あっ、やっぱりー? あれやっぱりクモの巣? そうじゃないかなーとは一瞬思ったけどな、ほこりかなーとも思ったわけよ。マジで。悪気はまったくなかったし。クモの巣がどないかしたん?」

「どないしたもこないしたも、左足、モロにクモの巣の上でしたわ。クモ直後にガバーッってすり寄ってきましたわ。これならアスファルトで暑いながらも土のとこまで自分のペースで移動してた方が、何倍もマシでしたわ。御主人が営業車で立ち去られた後、私糸でグルグル巻きにされて頭からいかれましたわ」

「謝れってか? ワシに」

「そんな言い方ないと思いますわ」

 横から等身大の蚊が出てきた。

「うわぁ、今度はなんや」

「昨日血を吸わせてもろうた蚊です。痛くなったらすぐセデス痒くなったらそりゃ蚊です。の蚊です」

「そんなコマーシャル知らん」

「御主人の血、吸わせてもろうたんですけど、血がドロドロで生んだ子供、のきなみメタボですわ。大丈夫かいな、飛べるんかいなこの子たち、みたいなレベルですわ」

「盗人猛々しいとはこの事や。ワシ知らんがな」

「それに御主人、無呼吸症候群でっしゃろ? 静かで今がチャンス、思って近寄ったら15秒ほどしてグゴーって呼吸が再開して、心臓止まりよったですわ。少し痩せなはれ」

「分かってるがな。最近ウォーキング始めたがな。一向に痩せんわ。効果がないから、会社から帰って歩く一時間を執筆に回したいくらいや」

「ミミズだーって、オケラだーって」

「何いきなりハーモニーしてるねん」

「御主人、もうちょっと気配りを徹底してくださいな。助けるなら助ける。中途半端で詰めが甘過ぎですわ。それでチャッカリと神の予約には『毛虫を救ったから生まれ変わりでキスを』みたいな予約が入ってるし。消さしてもらいましたわ」

「カラオケの選曲予約みたいに簡単に消せるんかい?!」

「言い分をちゃんと聞いてください。これでは死んでも死にきれません」

 耳の奥で虫たちの声がエコーする。ガバ、と布団から跳ね起きる。チュンチュンと雀が鳴き、朝日がカーテンの隙間から射し込んでいる。悪夢にうなされていたようである。

「ホームセンターアグロに行こう」

 開店を待ち、バルサンを手に取るとレジに走った。部屋に大量のバルサンをセットし、窓を閉め切って点火した。

 数時間後、部屋の中には蚊や毛虫やゴキブリの死骸が床に散らばっていた。ちりとりですくうと半分くらい埋まった。

 昆虫どもは全滅したようだ。以降、夢枕に昆虫が立つことは二度と無かった。

 次の日はグッスリと眠れた。





いつも来てくれてありがとう。ぜひ上の白いボタンをぜひ押してくれよ。虫とは友達になれそうにないです。
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呉エイジ

Author:呉エイジ
マックピープルの巻末に毎月こっそり「我が妻との闘争」を連載しておりました。電子書籍1巻から5巻、絶賛発売中!

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