高井麻巳子 Message



高井麻巳子 Message
発売日 1988年6月5日
型番 D32A0367

01.天球儀の夜
02.微笑みの中にさよなら
03.木洩れ陽のシーズン
04.同窓会で…
05.胸騒ぎのメランコリー
06.太陽とひまわり
07.汚れなき悪戯
08.2gの片想い
09.サイレント・ムービー
10.白い影
11.小さな決心

東京駅に降り立ち、私は打ち合わせのため寄り道もせず目的のビルまで直行した。

そのビルの一階は広いロビーになっており、待ち合わせの時間までまだ30分程あったので、ソファーに座って担当の編集者を待つことにした。

「貴方もこちらで本を?」

後から向かいのソファーに座ってきたのは、白髪の目立つ上品な感じの初老の紳士であった。

「えっ? ええ。ちょっとブランクがありましたが、アスキーの方でお世話になり、出るようなポシャるような綱渡りみたいな感じでして。貴方は?」

「ん? すると貴方は既に書籍を出されている方ということですかな?」

「は、はぁ、呉エイジと言います。アスキーで自著を四冊、角川から漫画版を二冊、その廉価版を少年画報社さんより一冊…」

初老の老人の頬は小刻みに痙攣していた。

「そ、それ、じ、自慢かい、呉エイジ? 知らんなぁ」

「いえいえ、自慢なんて滅相もない。チンケなサラリーマン物書きですよ。で、貴方も打ち合わせか何かで?」

「これまでに十冊程出版しておりましてな」

私は慌てて居住まいを正した。

「こ、これは失礼しました。大先輩を前に座ったままで。で、どちらで本を? こちらのアスキーからですか?」

「い、いえ、今回は持ち込みで来ましてな」

「別の出版社からですか?」

「い、一◯郎を使ってKi◯◯leで十冊ほど出版を…」(※筆者がチキン野郎なのでここは伏せ字(笑)

「一冊98円で出しております」

初老の紳士は聞きもしないのに付け足してきた。紳士の手に持たれたスマホには既に画面が表示されていた。私は目を疑った。その紳士の本と思われる扉のイラストが、専門学校生が半日で描いたような下手糞なイラストだったからである。

私は困惑した。私に作家差別は無い。モノ作りをする人にはどんな人にだってシンパシーを感じる。しかし、そういう何の困難もなく出した本を以て出版と称していいのだろうか。

「なんじゃあ、その目はぁ」

初老の紳士は逆上して私の胸ぐらを掴んできた。

「な、何をするんですか」

「今一瞬蔑んだ目で見たはずだ」

「み、見てませんて。完成作品というのは素晴らしいもんですよ本当に。なかなかできることじゃありません。電子出版ならスマホやタブレットを持つ人ならば浸透していくんですから書店売りよりも有利ですよね。どれくらい出ましたか?」

「発売三週間で8冊程売れておる。発売日のAm◯zonのデイリーランクでは、そのジャンルで8752位を記録した」

ランキングが心の支えにでもなっているのか、初老の紳士の機嫌は持ち直した。

「呉さんと言いましたかな? 貴方も四巻目までは順調に出て、今は六巻まで分量があるはずなのに、なかなか企画が通りませんなぁ」

私の事を知らないと言っておいて結構俺ウォッチャーやんけ! と、私は心のなかで叫んだ。

「電子出版で自信をつけましたので、次作はぜひ紙媒体で出したいと思いまして、いや、決して紙が上、電子出版が下、という意味ではありませんよ。アナログの手触りで私も一冊、とフト思い立ちましてな。売れそうなものをリサーチして初稿を持ってきた次第です」

「拝見」

表紙には「黒田官兵衛疾風録」とある。来年の大河の安易な便乗作品であろう。

〜中国の毛利勢とは簡単に決着は付きそうになかった。そこへ飛び込んできたのは京よりの使者。

「親方様が本能寺で討たれた」

その場で立ち尽くす羽柴筑前守秀吉。そこへ軍師の黒田官兵衛が背後より秀吉の肩を揉みつつ耳にフレンチ・キスをしながら囁く。

「今じゃん、今引き返して明智光秀を討てばいいじゃん。そうすれば殿が天下人間違い無しじゃん」

「ま、マジで? そのタイミングで其の案が出るて、オマエも大概やな」〜

私は原稿から目を逸らした。

「若者にもわかりやすい歴史物を目指しておりましてな、歴史ラノベアプローチとでも申しましょうか?」

私は次の言葉が何も出てこなかった。

「分かってるぞ、ちょっと馬鹿にしてること。電子出版の売り上げとか聞いてきたもんなぁ。ワシはオマエになんかに負けんぞ。お高くとまりやがって。紙の本がなんぼのもんじゃい。いずれ貴様をここで土下座さしちゃる。やられたら倍返しや」

この紳士はパクリが多かった。

私は訳のわからぬ挑戦を勝手に叩きつけられて姫路に戻った。意味もなく不安で不安定な精神状態のまま最近は過ごしている。

そんな近況だ。


いつも来てくれてありがとう。ぜひ上の白いボタンをぜひ押してくれよ。お笑いにして書いてますが、自力の電子出版は興味があります。

コメント

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Re: No title

書き継いで完成させてみましょうか!(笑)

No title

歴史ラノベちょっと気になりますw
別名でKi◯◯le版を是非!
渾身の最新単行本
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Author:呉エイジ
マックピープルの巻末に毎月こっそり「我が妻との闘争」を連載しておりました。電子書籍1巻から5巻、絶賛発売中!

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