Mon cher 高岡早紀



Mon cher 高岡早紀
発売日 1991年3月21日
型番 VICL-121

01.INTRODUCTION「夢の扉(INSTRUMENTAL)」
02.真夜中のサブリナ
03.眠れぬ森の美女
04.INTERMISSION「妖精の森(INSTRUMENTAL)」
05.悲しみよこんにちは
06.ナイフの鳥、綺麗な石
07.薔薇と毒薬
08.フリフリ天国
09.INTERMISSION「悲しみよこんにちは(INSTRUMENTAL)」
10.女優マリアンヌ
11.セザンヌ美術館
12.コバルトブルーの翼がほしい
13.CODA「夜明けに(INSTRUMENTAL)」


アンドロイドは電気羊の夢を見るか?



 映画「ブレードランナー」の原作小説。フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を新幹線の車中で読み終えた。

 先日、妻と結婚二十周年記念旅行で博多〜熊本を旅行してきたのだ。その往復六時間の読書である。

 昔から映画の大ファンである。小説の方は難解ではあったが、解らない部分がありながらも楽しみながら読み終えることができた。

 今回は狂った小話ではなく、読書感想文である。せっかくなので寸劇風に原作小説から感じ取ったことを書き綴ってみようと思う。


 私(呉エイジ)の前に現れた小説の主人公、ブレードランナーのリック・デッカード。

「今は何年だ?」

「うわ、感激です。デッカードさん。昔から大ファンです。格好やそのブラスターに憧れ、そうそう。そのデッカードブラスター。現代でも高い人気で、精巧なレプリカは高い値で取引されています」

「レプリカントだと?」

 素早くブラスターを構えるデッカード。
rick.jpg 
「いえいえ、レプリカントじゃありません。レプリカ品ってことですよ」

「そうか。ところで、この世界はどうなってる? 人間社会にレプリは紛れ込んでいないか? 俺はそいつらを廃棄するのを生業としている」

「いませんよ、人間そっくりな人工生命なんて。まだそんな科学に達していないですよ」

「本当にそうか? 君の後ろにいる男、挙動が怪しいぞ?」

「あっ、彼ですか? 彼は僕の後輩ですよ。前にフィリピーナの結婚詐欺にあい、貯金を全て失ったドジな奴です。寡黙ですが、人間ですよ」

「本当にそうか? 一応フォークト=カンプフ検査法でテストしてみよう」

 デッカードはアタッシュケースを広げ、見たことも無い機械、レンズやモニターや心拍数が測れる機能が一体になった機械を準備しだした。

「それじゃいくよ。後輩くん。リラックスして質問に答えてくれたまえ」

「は、はい」

 後輩は緊張しながら頷く。

「部屋で女の子二人が遊んでいる。A子ちゃんが大事にしている人形、B子ちゃんも遊びたいが少しも貸してくれない。A子ちゃんが一階にあるトイレに向かうために部屋を出た。腹いせにB子ちゃんは人形をベッドの下に隠した。戻ってきたA子ちゃんは人形がなくなったことに気付き泣き叫ぶ。さて、これからA子ちゃんはどうするか?」

「ベッドの下から人形を奪い返します」

「こいつはレプリだ」

 デッカートはブラスターを後輩の眉間に突きつけた。

「うわーっ、デッカートさん。違います違います。銃を引っ込めてください」

「人間とレプリを区別する唯一の違い。それは『感情移入できるかどうか』なのだ」

「いえいえいえ、違うんです。あなたの小説が発表された何十年前とは状況が変わっているんです。これ、マジなネタじゃないですか。後輩がアスベルガーの気がある、って話。質問に対して、この通り彼は答えたのです。彼がもし読んだら傷つくパターンのやつじゃないですか」

「そうだ、そうやって君のように相手の気持ちになれる、っていうのが人間であってレプリとの決定的な違いなのだ。彼はA子ちゃんになって考えることができないのか? トイレに行っているからB子ちゃんが隠す所を見たわけではないから、ベッドの下にあることを知るはずがないだろう」

「そうです、そうですけど現代はそういう時代なんです。頭はいいんですが俯瞰してみることの出来ない人間が増えています」

「そうか、核戦争は起こっていないが、あんまりいい未来にはなっていないな」

 デッカードはブラスターをホルスターに収めた。

「この世界ではフォークト=カンプフ検査法は無効、ってわけか。それならばこの世界で有効な機械に切り替えよう」

 デッカートは新しい機械を目の前に差し出した。

「こ、これは!」

「ドクター・キャッポーだよ」

dr.gif 

「な、懐かしい。中一時代とか中一コースみたいな雑誌の後ろに広告が出ていましたね。睡眠学習期と一緒に」

「これはこの線にそって手を置き、興奮状態を測定できる機械なのだ。レプリは興奮すると桁外れな数値を見せる。君の後ろに隠れている挙動不審な男をテストしてみよう」

「いえいえいえ、彼は親友の漫画家、金平です。れっきとした人間です。最近鬱気味なので、ぜひ本を買ってやってください。アマゾンでポチっとしてもらえば、ここで私に幾ばくかの収入がはいります」





「レプリの可能性もある。念のためだ、テストしてみよう。金平さん、この機械に手を置いて私の質問に答えてほしい」

 金平は瞳孔を開きながら、自称下手くそな対人関係の看板に嘘偽りのない不審さで手を置いた。

「それでは始める。女性ロボットの燃料が切れかけたので、急いで給油した」

biton.jpg



ビーッ、ビーッ、ビーッ。ドクター・キャッポーの目盛りは一瞬でマックスまで振り切ってしまった!

「こいつはレプリだ」

 デッカートは金平のこめかみのブラスターを突きつける。

「うわー、違います違います。待ってください。彼は人間です」

「何故だ? これはロボットの給油の図だ。ロボットの気持ちになったら、満タンになって良かったな、だろう。この『今にも射精しそう』な位の異様な興奮の数値はどう説明する? レプリに間違いない」

「いやいやいや、待ってください。そのおっかない銃を引っ込めてください。彼から聞いたことがあるんです。幼い頃、これは「ロボッコビートン」というアニメですが、女性がアナルに異物を突っこまれて、注入されながら恍惚の表情を浮かべるシーンを見たとき、どうしても勃起を抑えることができなかった、と。私はそういう感情は持たなかったのですが、彼は繊細で芸術肌の人間です。この絵で彼のイマジネーションが予期せぬ暴走を起こしてしまったのでしょう」

「そうか。ならその言葉を信じよう。しかし、このプライベートな告白を、インターネットという世界に放流して彼との関係が険悪にならないかね?」

「ギリ大丈夫かと思います。単行本の宣伝もちゃんとしてますし、彼も表現者です。興味を持ってもらえればよしとするでしょう。ぜひポチってやってください」

「私も君たちの世界では人間を誤射してしまう可能性が高いな」

「小説で解らない部分がありました。地球に残された大多数の人間が依存する共感現象、マーサー教のことなのですが」

「あぁ、あれは宗教とか、精神安定剤にすり替えて読んでもらえばいいと思う。彼を見たまえ」

 椅子に満足そうな表情を浮かべて目を閉じている一人の男がいた。

「彼は鬼嫁との生活で自由を奪われ、更に小遣いも減らされた。そして職場では出世の名目で雑用を振り分けられた。ストレスが半端ない」

「な、なんだか僕と同じ境遇ですね」

「彼は今、マーサー教(精神安定剤)と一体化し、魂の安らぎを得ている。これを見てどう思うかね?」

「こ、これは僕の幸せの形じゃありません」

「何故だい? この状態のときは明日への不安、仕事の不安から一切解放され、おだやかな気持ちで一日を終えることができるのだよ?」

「それでもリアルではありません。まやかしです」

「何がどうリアルなんだい? まだ訪れてもいない未来に対して今、終始おびえているのが正しいありかたなのかい? 老後は収入がなくなっている、嫁に見捨てられ貧しく暮らす。そんな空想に支配されて暮らすのが君のリアルなのかい? マーサー教と一体化すれば、つまらぬ煩悩から解き放たれ、君みたいな取り越し苦労ばかりせず、素晴らしい気分で一日を終えることが出来る。この『素晴らしい気分で一日を終える』ことが重要だとは思わないかね?」

「自分の強い意志、気持ちの持ち方が大事、ってことですか?」

 デッカートは扉の向こうから女性を招き入れた。

「こ、この人は? とても可愛らしい人だ(巨乳をチラ見している)」

「君のファンの女の子だよ。とても淫乱だ。君との思い出に一発所望している。どうだい?」

「い、いいんですか? こんな可愛い子と。芸能界に入れそうなくらい美人じゃないですか」

 私はズボンをズリ下ろすと、硬くなった陰茎を支えながら、彼女の秘部に向けて挿入した。可愛らしい顔がいやらしく歪む。連続運動の途中で、デッカートが私に写真を見せた。

「彼女の整形前の顔がこれだ」

 ビックリするくらい不細工な写真であった。息子は萎え、運動は止まる。

「整形をレプリと言い換えて炎上しませんか? なんです、この比喩は」

「汚いのは受け手の彼女ではない、君がどう思ったか、だ。君は彼女を可愛いと思い行為に及んだ。その気持ちに偽りはなかった。が、彼女はレプリ(整形)だった。これは小説の最後、荒れ地で絶滅したヒキガエルを見つけて興奮しながら持ち帰るシーンに呼応する。私は喜んで蛙を妻に見せるが、妻は電気蛙(整形)であることに気付きデッカートにその事を教える。デッカートはその事実に萎えるのだ。気付かぬまま本物だと思い飼育し続けたり、先ほどの君のように、あのまま射精した方が本当に幸せなのか。それとも事実を知る方が幸せなのか、君はどう思ったね?」

「本当のことを言えば、彼女の整形前の顔を知って、僕のせがれが萎える事を彼女に気付かれたくなかった。その現象はきっと彼女を傷つけてしまうから」

「そうだ、それが人間らしさ、ということだ。思いやり、感情移入。それを無くせば、レプリとなんら変わりは無い」

「あの小説の最後、妻が電気蛙の疑似えさを注文して、デッカートと飲むためのコーヒーを炒れるシーンで終わりますよね。あれは『世間という摑み所の無い物の表裏を追い求めるな、まず目の前にいる隣人と心穏やかに過ごせ』というメッセージなのでしょうか?」

「君はあの小説をそう読んだんだね」

 デッカートは満足そうにホバーカーに乗って帰っていった。


いつも来てくれてありがとう。ぜひ上の白いボタンをぜひ押してくれよ。小説も映画も最高だよ。ブレードランナーは。

コメント

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Re: No title

ずっとあるもの、と思っていました。
寂しいですね。

No title

とうとうホームページが消えましたね。
なんか時代の流れを感じました。

Re: 久しぶりに読みました。

> 呉さんの文章はいつも面白いです
ありがとうございます!
最近はnoteの方にも書いてますので、よろしければそちらもどうぞ。

久しぶりに読みました。

呉さんの文章はいつも面白いです

Re:

原作小説をようやく読みました。どちらも傑作ですね。

久々のブログ引き込まれました
ブレードランナーぼくもかなり好きです
渾身の最新単行本
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Author:呉エイジ
マックピープルの巻末に毎月こっそり「我が妻との闘争」を連載しておりました。電子書籍1巻から5巻、絶賛発売中!

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