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小栗虫太郎『新青年版 黒死館殺人事件』を読んでみた。

小栗虫太郎『新青年版 黒死館殺人事件』を読んでみた。





 何年間の積ん読を経ての読了であろうか。相当の積み具合である。中学一年の時に江戸川乱歩、横溝正史を読み始め、その流れで夢野久作、そしてエッセイなどで目にした日本ミステリの三大奇書の一つが本書、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』であることを知った。

 教養文庫版を一番最初に買ったと思う。そして当時、読んでみたのだが、これがサッパリ分からない(笑)

 まぁ中学生だから仕方がないか。その後、創元推理の分厚い文庫版を買い、二十歳くらいであったろうか。その時には読書経験も相当積んで「ドグラマグラ」と「虚無への供物」が読めたのだから、きっと読めるはずだ。

 孫悟飯ではないが『今度はやられねぇように修行した』とばかりに勢い勇んで挑んでみたのだが、第1章を読み切ることさえできなかった。

 それ以来のトラウマ本である。

 全く分からない。登場人物の会話が理解できない。みんな分かった風に進行していくが、こちらはビジュアルすら浮かばない。という色々なストレスが襲いかかってくる小説であった。

 これが奇書か、とため息をつく他はなかった。

 そのまま積ん読になること二十数年、そうして最近、ネットで『どうやら黒死館殺人事件が出るらしい、それも新青年版の復刻で挿絵も収録されるらしい、本文には詳細な脚注がつくらしい』という情報を目にした。

 これならばもしかしたら読み切ることができるかもしれない。そう思わせるような内容であった。

 積ん読はしていたが、本書のことは絶えず気になっていたのだ。小栗虫太郎ワンダーランドというムック本を買い、プロである横田順彌氏が「難しい」と言ってらっしゃるので、私が理解できなくて当然ではないか、と安心したものだった。

 会社の同僚や、同世代の四十代に比べ、読書量は多い方だ、という自負もあった。なんとか読んでみたい。

 そうして先日、遂に読了した。未曾有の読書体験であった。カルチャーショックだった、と言い切ってもいい。

 現代の私なら『これとこれを逆に飾ってあるから『虐殺』のメッセージね』と、これまで目にしてきた娯楽作品から、なんとなく『そういうパターンのやつね』という認識にも及ぶが、発表当時の読者の置いてけぼり感を考えたら気が遠くなる。

 何年先をいってるんだ、とも思うし、一級の娯楽作品でありながら作者がイッちゃってる相当なアバンギャルド作品である。

 まず私の常識から脳天をハンマーで打ち砕かれた格好から入った。小説とはそもそも他人に分かりやすく書かれるものではないのか? という常識だ。

 それがこの作品では全く通用しない。痛快ですらある。読まれることを前提としない小説なんじゃないのか? とさえ思った。

 私は読みながら、絶えず『この膨大なペダントリーの積み重ねの先に何があるのか、何を目標としたのか』ということを意識しながら読んだ。

 序文の乱歩と甲賀三郎も文章を寄せてはいるが、迂闊に近付けない様がありありとみて取れる。

 そして会話の後も普通の閉じ方はしない。こねくり回してくる。

「ホニャララ」と十津川は言った。

 みたいな表記は一行もない。

〜法水は紙巻を口の中で玩びながら、寧ろ残忍に見える微笑を湛えて相手を眺めていたが〜

 毎回このような熱量で会話が進行していくのだ。

 これはミステリーの体裁を取った、天才小栗虫太郎の知識の羅列の書なのだ。暴論を承知で言いますけどね。私にはそう感じ取れましたよ。

 ペダントリーの積み重ねの先に物語としての意味はなく、積み上げることが目的であったのだ。と納得した。

 著者が吸収してきた様々な学問、それらをリアリティを湾曲してまで物語に当てはめ組み込んでいく。

 作者の、この手ならいくらでも書ける、というのは強がりでもなんでもなく心底そう思っての発言だと思う。一般ピーポーに知的レベルを落とす手間を省いているのであるから当然といえよう。

 読み手を選ぶ作品ですけどね、読みにくいですが、この新青年版は一筋の光明を与えてくれます。

 二度挫折した私が読み終えることができたのがその証拠です。

 作者のペダントリーの連べ打ち、その本文の下に注釈がつきます。これが置いてけぼり感をかなり軽減してくれます。

 理解は完全にはできませんが、ボンヤリとどんなものかは自分なりに想像ができます。これは大きい。

 三大奇書を読み終えることができましたが、本書が一番面白かったですね。読めて本当に良かった。







いつも来てくれてありがとう。貴方が押すから順位が上がる。やる気も上がる。

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